理事長あいさつGreeting
- 兵庫医療学園・兵庫鍼灸専門学校理事長
- 相生学院高等学校理事長
- 富士コンピューター株式会社代表取締役
- 森 和明
ご挨拶
私はこの10年間、医療介護型ロボットの開発に関わって参りました。最初は可愛い犬モデルのロボットで、患者さんとの対話や介護のお手伝いができることを目的としました。次に関わったのは孤独・孤立した御老人やうつ病患者様に対応するロボットでした。うつ病と云っても色々なタイプがあり、このロボットは更年期以後に発症する、高齢女性に多いメランコリー型うつ病患者様を対象にしました。メランコリーと云う語源は、紀元前2500年の古代ギリシャ語に遡り、メランは黒いと云う意味でコリーは胆汁を意味し、当時は黒胆汁が作られる臓器は脾臓であると考えられていました。今ではメランコリーと云えば“憂鬱”と云う語源であることは、皆様ご存知でしょう。このメランコリー型うつ病の多くは、比較的治療しやすく回復する可能性が高いうつ病です。しかし、薬剤を服用し続けると副作用が出たり、回復困難になります。うつ病のロボットは、高尚な笑いや心からの感動を齎(もたら)すストーリーを患者様の話かけて、患者様の閉塞した心の窓を開きます。最近、挑戦しているフレイルやロコモ対応できるロボットも斬新で意欲的な製品です。フレイルとは虚弱と云う意味ですが、身体の筋肉量が減少し歩行に支障を来す状態を云います。さらに高度となるロモコ症候群となります。ロモコとは四肢等の運動器障害を指し、諸段階を経て最終的には寝たきり状態になります。私は御老人達が寝たきりにならない様に、健康寿命の延伸を目指して励んできました。しかし、世間に認知されていないロボットの開発は紆余曲折思考錯誤の連続で、失敗を重ねて参りました。そして、これらの失敗の蓄積を次の第1歩への糧として「ピンチはチャンスである」と心に鞭打って前進して参りました。苦しいロボット開発途上で、東洋医学とくに鍼灸医学の奥の深さや全人的対応に惹かれました。しかも鍼灸医学は副作用が少なく、現今の遺伝子薬のように驚異的な高費用とは全く無縁の治療法であることを知り、ロボット医療に通じる鍼灸医療の意義を認識しました。この度縁あって鍼灸専門学校の理事長となり、皆様と共に弱い方達や病苦に喘ぐ方々の一助になれる悦びを噛み締めております。